境内で拾った小さな「星」は、
死と生をそっと結ぶ、見えない交差点だった。
奈良の小さなホテル「奈良倶楽部」へ、完成した作品を届けに行った日。
オーナーの谷さんは、八角形の実の話をしてくださった。また偶然にも娘さんの名前には全て八の字が入っていると言う話。
櫁(シキミ)と八角(スターアニス、トウシキミ)
境界を照らす光のような、静かな涙だった。
櫁は弔いの香りを宿し、
八角は生命を祝福する甘い香りを放つ。
一つの形が、生と死という二つの世界を往還している。
掌に乗せた“八芒星”の影が、ふっと震えた気がした。
悲しみではなく、
「八芒星の涙」は

二つの香りがひとつの星に重なり、
見えない世界が少しだけ姿を現した瞬間の記録です。