漆と麻布と金箔 ―― 静けさの中に灯る、小さな光のジュエリー
彫刻を制作するときと同じ姿勢で、素材の呼吸に耳を澄ませながら生まれていくジュエリーがあります。
今回ご紹介するのは、漆・麻布・金箔という、日本の工芸に根ざした素材だけを組み合わせた小さな作品群です。
漆がもつ深い艶と静けさ。
麻布が生み出す、繊維そのものの質感。
そして金箔が放つ一瞬の光。
それぞれが強く主張するのではなく、互いに溶け合いながら、やわらかい存在感をまとったジュエリーへと仕上がっていきます。
素材が支える世界観
漆 ― Urushi
長い時間をかけてのみ輝きを深める素材です。
光を受けたときの反射は控えめで、どこか内側から淡く明るさを放つように見えます。
身につける方の静かな強さを引き出すような、そんな気配があります。
麻布 ― Linen base
水島の彫刻作品でも重要な役割を担ってきた素材です。
繊維が生きているような揺らぎがあり、漆で包み込むことで深みのある表情へと変化します。
小さなジュエリーの中に、彫刻と同じ「呼吸」を宿します。
金箔 ― Gold leaf
極めて薄く繊細でありながら、わずかな量でも空気を変えてしまうほどの力を持っています。
暗い背景の中にひと筋の光を差し込むような役割を果たし、作品に静かな高貴さを添えます。
“境目”をかたちにするジュエリー
テーマは、彫刻作品と同じく「境目」。
日常と非日常、影と光、強さと脆さ――
その狭間に生まれる曖昧な揺らぎを、小さな身につける作品の中に閉じ込めています。
漆の深い黒の中に金箔が一滴だけ浮かぶペンダント 麻布の質感がほのかに透ける、柔らかな輪郭のイヤリング 光が沈黙の中に溶け込むような小さなブローチ
どれも一点物で、同じ模様は二度と現れません。
身につける方の佇まいと触れ合った時、その作品がようやく静かに完成します。
オーダー制作について
今回、少数ですがオーダー制作を承ります。
・対応形状: ペンダント/イヤリング/ピアス/ブローチ
・素材: 漆、麻布、金箔
・色調: 黒・朱・金を基調に、細部はご相談の上で調整
・制作期間: 約3〜6週間(漆の乾燥や天候により前後します)
最初に簡単なヒアリングを行い、
「どのような表情の作品を身につけたいか」
「心に残しておきたい光や記憶があるか」
そうしたお話をうかがいながら制作します。
最後に
身につける人の時間や静けさに寄り添うような、
そんなジュエリーになればと願っています。
漆の深さ、麻布の息づかい、金箔が放つわずかな光。
それらが合わさって生まれる“境目の表情”を、
どうぞ手にとって感じていただけたら嬉しく思います。


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