帰る

観音院へ──時をこえて、帰る日。
おはようございます。今日も一日何卒よろしくお願いを申し上げます。
観音院に搬入してきました。
障子越しの光、畳の香り、木のぬくもり。
そのすべてが、どこか懐かしい記憶の中と重なっていくようでした。

この観音院は、戦時中に祖父・水島弘一と父・石根が身を寄せ、お世話になった場所。
ふたりが過ごしたその空間に、いま自分の作品を置くことになるとは思ってもいませんでした。
まるで時間がひとつの円を描いて、再びこの場所に導かれたような感覚です。

床の間には、志賀直哉の書「徳不孤」。
三十数年ぶりに観音院へと帰ってきました。
その前には、祖父の未完の聖徳太子坐像が静かに座しています。

未完成のまま残された祈りと、
長い時を経て戻ってきた書、
そして新たな息づかいを持つ僕の作品たち。

それぞれが別々の時間を生きながら、
今日、ひとつの空間で出会い直しました。
そのことに、ただただ感激しています。

ご縁に導かれ、ここまで来られたこと。
言葉にならないほどの感謝とともに──

観音院での展示、まもなく始まります。
どうぞ、この“帰る”という奇跡のような時間を感じにいらしてください。
10月25日〜11月1日 東大寺観音院

徳不孤。善きものは、決してひとりにはならない。
祖父や父、そして支えてくださった方々とのつながりを思うと、
その言葉の重みが心に沁みてきました。