恐れを乗り越えて 敬意
おはよう御座います。今日も一日何卒宜しくお願いを申し上げます。水島太郎です。
一歩が踏み出すのが怖い時があると思います。やってみないと永遠に続きますが案外なんともなかったり仲間になったりするものです。
私は、麻布に漆を塗り重ねてかたちをつくる「脱乾漆(だっかんしつ)」という技法を用いて彫刻をつくっています。
しかしこの漆という素材は、不思議なものです。
最初に漆を扱い始めたとき、かぶれました。
肌が赤く腫れ、痒みに悩まされました。
漆はもともと、木が自らを守るために持っている毒。
近づくものをはねのけるための力です。
けれど、この「毒」である漆こそが、
日本の文化の中で、最も繊細で、最も美しい艶を生み出したり接着剤としたりと優秀な素材になってきた。
塗っては乾かし、塗っては乾かし
毒は悪ではなく身を守る為の生きる為の力。それをどう扱っていくかは人間の理解と選択にかかっています。
相手を知り、向き合い、付き合っていくという姿勢。
この世界には「怖いもの」「傷つくかもしれないもの」がたくさんある。
でも、だからこそ美しいものもあるということを、漆は教えてくれました。
素材に耳を澄ますように、
人にも、土地にも、異なる価値観にも、
まず「敬意をもって触れること」。
そうすれば、毒だと思っていたものの中に、
静かな力や、癒しの光が見えてくるかもしれません。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。
