形にする前に整える彫刻家の実践する心と体のスタートダッシュ

4月の慌ただしさがひと段落し、ふと気が抜ける5月。
新年度のスタートから少し遅れて、ようやく自分のペースに目を向けられる時期でもあります。

彫刻家として日々「形」に向き合っていると、心と体が整っていない時ほど、手が迷い、判断が鈍るものです。目の前の素材は正直で、こちらの状態を映し出してくれます。

だからこそ私は、制作に入る前に「整える」時間を大切にしています。
これは彫刻家に限らず、誰にとっても大事なことだと思っています。

■ 心を整える:朝に「何もしない時間」をつくる

一日の始まりに、スマホも本も持たず、ただ窓の外を眺める時間を5分でも取っています。
「自分の中に風を通す」ような感覚です。頭の中がいっぱいのまま手を動かすと、焦りや迷いがそのまま形になってしまうから。

やるべきことを始める前に、「今、自分は何を感じているか」を見つめる。
心がクリアになることで、その日何を優先すべきかが自然と見えてきます。

■ 体を整える:素材のように自分の「癖」を知る

私は麻や漆といった自然素材を使っていますが、それぞれに個性や「癖」があります。
扱いづらい時もありますが、それを否定せず、どう向き合うかを考えることで作品が育っていきます。

同じように、自分の体にも癖があります。
姿勢、呼吸、食べ方、眠り方…
5月は生活リズムを見直す絶好のタイミングです。たとえば、朝一番にストレッチを取り入れてみると、自分の「こわばり」がどこにあるかに気づけます。これはそのまま、心のこわばりにも通じるヒントになります。

■ おわりに:「整えること」は、自分にチャンスを与えること

作品をつくる時、下地をしっかり整えれば、あとの作業が驚くほどスムーズになります。
それは日常も同じ。
5月1日という日を、ただの「連休中の一日」にせず、小さくてもいいから「整える」一歩を踏み出す日とする。
それが、自分自身の形を少しずつ彫り出していく、確かなスタートダッシュになると信じています。

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