結ぶということ──真田紐と禁色のあいだで

先日、真田紐の専門店を訪ねました。
機で丁寧に織られた細い紐たちは、実用品でありながら、ひとつひとつに確かな存在感が宿っていました。

中でも心に残ったのは「約束紐」という言葉。
大切なものを結び、ほどけないようにと願いを込める紐。それは、信頼や絆の象徴として使われてきたそうです。見た目はとても素朴ですが、その背景には「結ぶ」という行為に託された静かな祈りがあるのだと教わりました。

同じ“色”や“形”が意味を持つという点で、思い出されたのが、最近Twitterでも話題になった万博の衣装の件。天皇以外の者が着てはならないとされてきた「禁色」を模した装束が使われたことで、多くの議論が巻き起こりました。格式や意味の重さに対する認識が、時代や立場によって大きく異なることを、改めて感じさせられる出来事でした。

真田紐のように、かつての意味を受け継ぎながらも、今の暮らしの中で新たな役割を担うことができる「かたち」もある。
一方で、色や形式に込められた歴史を軽んじれば、誰かの痛みや違和感を生むこともある。
そのあわいに、今の私たちは立っているのかもしれません。

結ぶこと、ほどけないようにすること。
その奥にある約束を、忘れずにいたいと思いました。

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